無溶剤・無機質塗料 セラトンについて

 

鈴木産業株式会社 

 

1.はじめに

塗料は鉄構構造物、建築物、住宅等の社会資産の耐久維持と美しく保つ2大機能(又は特殊機能)を目的とする材料です。

セラトンは技術社会の進歩からの機能要望やメンテナンスフリ−の経済性、又、公害性(化学物質・環境ホルモンなど)への環境対策として、石化資源からの誘導原料による塗料ではなく、次世代の塗料とすべく開発し、更に、プライマーとして無溶剤・無機バインダーに特殊有機樹脂を複合した「セラニック」を開発しました。

セラトンは従来塗料の劣化原因となる紫外線による解離〈チョーキング〉や熱・酸素・水分等による劣化・風化が起こりにくい、無機結合剤を主剤として無溶剤で揮発性有機化合物(VOC)を含有していない製品です。

 

2.従来の塗料の問題点

@     有機系材質による塗膜形成主剤(結合接着剤)は、分子の結合エネルギーが弱く、経時過程で結合主鎖の切断(チョーキング)が起こり、紫外線・水分や酸素などの複合環境では劣化が特に進み、短期間でのメンテナンスが必要になります。

A     石油化学からの誘導物である有機合成樹脂系の結合接着剤は、燃焼時には多量の有毒ガスを発生させます。

B     有機樹脂塗料は、副資材として揮発性有機化合物(VOC)を多く必要とし、環境汚染や公害を引き起こすとの指摘があり、世界的に規制の強化が進められています。

 

3.無溶剤・無機質塗料 セラトンの特徴

3.1 環境面での特徴

<VOC規制に対応>

セラトンは、結合剤(バインダー)に有機樹脂が使用されておらず、オルガノポリシロキサンによるシロキサン結合[Si−O(岩石構造)]の造膜であり、無溶剤で常温施工が可能な公害物質を含まない、従来の有機系塗料とは異質の全く新しい環境対応型の材料です。

 

<省資源>

現在の主流となっている有機合成樹脂塗料の粗原料である石化資源の埋蔵量については、クラーク

数0.07%と推定されており、近未来には枯渇が心配され、又、産油国の動向によって世界経済に大きな影響を及ぼしています。

セラトンの塗膜形成主剤の主成分の珪素は、クラーク数25.7%と無尽蔵に近い粗原料です。

<環境ホルモンに関して>

 現在、外因性内分泌かく乱物質(通称:環境ホルモン)として疑われている約70種類の化合物に

関して、セラトンは、その製造過程から被覆形成後の塗膜そのものにも一切含まれておらず、環境ホ

ルモンに対しては全く問題ありません。

 

3.2 機能面での特徴

<塗膜の結合>

セラトンの塗膜形成主剤(結合剤)であるオルガノポリシロキサンのケイ素(Si)原子は周期律表では炭素と同じW族ですが、炭素の共有結合との違いは、炭素(有機)より金属性が大きく元素電子を多く持つ特長から、ケイ素[Si(非鉄金属元素)]の陽イオン(+)と非金属元素[O(酸素)]の陰イオン(−)の組合せの電気的引力でイオン結合を含むセラトンは、強い結合エネルギーでイオン性の高い充填剤との親和性も高く、緻密で強靭な不活性の膜が構成されますから、劣化剥離がありません。

 

<耐候性・耐紫外線性>

今日の塗料の機能性を左右する塗膜形成主剤である結合剤は石油化学資源を粗原料とする有機合成樹脂が主流となっています。セラトンは不燃物質の珪素による無機高分子の化学結合(シロキサン結合)で緻密な造膜を作る塗料です。セラトンのオルガノポリシロキサン結合造膜は、太陽光の分光帯で地球上のあらゆる物質に影響を及ぼす紫外線(290nm〜400nm)の解離波長域外の地上に到達しない270nmに解離感度があり、塗膜結合の結合鎖の切断や解離エネルギーによるチョーキング(粉化)や劣化が起こらない物性です。

 

<紫外線と充填剤(チタン)の触媒影響>

最近光触媒型チタンによる防汚染の研究で、塗膜に付着する浮遊有機物が光触媒型チタンと紫外線の化学反応での触媒作用によって分解され、降雨などで除去する施工が行われています。

チタン金属の活性性は従来より言われており、不活性化への酸化チタンなどに加工され、現在塗膜形成主剤とする有機合成樹脂に充填剤としてルチル型チタンが使用されています。

多量の充填剤の使用では、有機系結合主鎖は切断され自己劣化(白亜化・チョーキング)が進行する事が確認されており、これらの点からも長耐久性の期待は得られないと思われます。

セラトンの無機結合は、チタンの触媒作用による結合主鎖の切断は起きることなく、チタン多量使用の塗り板の沖縄地区での長期暴露においても光沢の消失が見受けられず、白亜化現象も起きていないことからも、長期耐久性が期待されます。

 

<耐水性・撥水性>

セラトンの塗膜形成主剤は、膜表面にメチル基の拡散被覆膜が出来るため、一般の有機樹脂に比べて疎水性が高く、耐水性・撥水性に優れており、これは側鎖の置換基のメチル基が多く含まれる程、表面張力の接触角が大きくなる性質からであると言われております。無機分子の無機結合主鎖の反応硬化膜は、水素や酸素などに不活性で軟化・膨潤も起こらず、結合主鎖の切断も起こらない物性です。

 

<耐塩水性>

セラトンの反応硬化膜は塩水中に長期(1年間)浸漬テストにおいても、皮膜表面は全く軟化・劣化の兆候も無い高光沢の状態を維持します。

 

<耐酸性>

大気環境は、純粋な活性酸素と工場排出や生活環境などからのNox・Soxの化学反応した酸化環境は、あらゆる物を酸化(腐食)する方向にありますが、「セラトン」は、結合剤である塗膜形成主剤のシリコーンが既にSiOx単位のあらかじめ酸化された形になっており(東レダウコーニングシリコーンハンドブック)、既に酸素との化合物となっている結合被膜は不活性被膜であり、更に酸化が進行しても有機物性と異質で酸化(劣化・腐食)が進まない方向にあり、酸性雨などに対する化学的安定性に優れています。 

 

<耐熱性>

セラトン(オルガノポリシロキサンを塗膜形成主剤)の造膜結合する分子は不燃性の無機物質で、架橋反応過程で含有する有機置換基の一部量は排出され、残留の有機物は骨格に比べてごく少量となります。更に、主鎖であるSi−O結合エネルギーが106kcal/molと大きく、分子鎖の切断が起こりにくい事があげられます。又、セラトンの塗膜形成主剤が熱酸化する過程で膜内の無機フィラー成分や基材との間にSi−O金属の酸化物結合を形成して発生したラジカルに対する共鳴安定化の効果により、不燃性・難燃性の膜が構成されます。(シリコーンレジンの組合せと選択によって耐熱温度は異なります)

 

<耐微生物劣化(カビなど)>

微生物は有機高分子膜に付着して有機結合剤を餌として外生酸素を生成して有機高分子膜の分解を深部まで進行しますが、セラトン造膜は微生物の食飼となる有機成分は殆ど含有されておらず、又、微生物が生成する酸素には不活性の塗膜で、付着微生物はガラス面に着いた付着物と同様に簡単に除去出来ます。

 

3.3 塗装作業面での特徴

<作業者及び周辺への安全性>

 セラトンは全くの無溶剤であり、施工中はシンナーなどは使用しませんので、シンナー臭の発生も無く、安全に施工を行うことが出来ます。

 

 

<リコート性>

 造膜面を誤って器物などで損傷・剥離させてしまった場合でも、容易にタッチアップなどの補修塗装が可能です。

 

4.セラトンの耐用年数50年への可能性

 

耐久維持・美観維持(防食・防汚)のための塗装工事は、塗料の原料・配合・調合と塗装条件によって性能が決まってきますが、塗装条件については施工者に依るところが非常に多く、塗装環境・被塗物の種類・素地調整・塗装方法などは、施工者によって決められてしまいます。

 従いまして、特に鋼製構造物等に対してメンテナンスフリーで耐用年数50年以上を求めるには、厳格な管理の下に施工が行われていても、端部・添接部・ボルト部などに対しては100%発錆を防ぐことは困難であり、このような部位に対しては塗装後15〜20年程度経過した時点で塗膜状態を点検して、必要な補修などを行うことによって被塗装物の保護を行ってゆかなければなりません。

 セラトンは、リコート(タッチアップ)に関しては、表層を清掃・サンディングするだけで可能であり、非常に現場での作業性に優れた塗材ですので、定期的なメンテナンス及び補修を行うことにより、耐用年数50年は実現が可能であると確信しています。

 

5.セラトン特性試験結果表

試験項目 試験結果 試験方法
光沢度 80%以上 JIS 5400 7.6 (60°鏡面光沢度)
鉛筆硬度 3H〜4H JIS 5400 8.4 (鉛筆引っかき値)
耐水性 異常無し JIS 5400 8.19 (耐水性:30日)
耐沸騰水性 異常無し JIS5400 8.20 (耐沸騰水性)
耐アルカリ性
(飽和水酸化カルシウムap)
異常無し JIS 54008.2 (耐アルカリ性30日)
耐酸性 (5%硫酸・塩酸) 異常無し JIS 5400 8.22 (耐酸性:10日)
吸水性 0mℓ JIS A1404 10 (吸水試験)
透水性 0mℓ JIS A1404 11 (透水試験)
中性化深さ 0mm 30℃・65%RH・CO 10%:1ヶ月
温冷繰り返し作用
に対する抵抗性
異常無し JIS A6909 7.11 (温冷繰り返し試験)
促進耐候性 異常無し スーパーUVテスターW型:1400時間
(自然暴露に換算して18年間)
防火性 不燃性 建設省告示 第1828号:表面試験
防汚性 I・II 種合格 土木用棒汚染材料評価促進試験法(案)
ホルムアルデヒド 0,08r/ℓ JIS K5601-4-1:2003 (塗膜からの放散量:デシケータ法)

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